現在、医療の分野においてもIT化は進んでいて、その一つが電子カルテである。
患者の情報や病歴をデーターベース化して閲覧できるシステムとして、多くの病院で使われている。
紙のカルテと違い、大容量の情報をコンパクトにまとめられ、画像も一緒に添付できるなど利点が多い。
カルテを用意するにしても毎回該当者のものを探し出して用意する必要もなく、病院内の業務の効率化にも役立つとして期待されているシステムである。
しかし、その一方でシステムエラーやセキュリティ的な問題もあるために、完全普及にまでは至っていないのが現状である。
確かに、何でもかんでもIT化すれば便利になるというものではないだろう。
ネットワークのトラブルや停電など、予期せぬ事態には案外アナログな方式の方が強かったりするものだ。
ところが、別の意味から電子カルテに反対している医療関係者もいる。
あるベテラン看護師は「電子カルテがあると患者をよく見なくなってしまうのでいけない」と言っている。
本来、医師や看護師はきちんと患者を観察し、その病状やニーズを知ることが求められる。
患者のちょっとした変化や表情も、現在の状態を知る手掛かりだからだ。
しかし、電子カルテがあると、医師も看護師も患者本人ではなく、ついカルテの画面ばかりを見てしまう。
その結果、患者の状態を十分把握できずに終わってしまうので駄目だ、という意見である。
これを聞いてなるほどと思った。
さすが長年看護師としての経験を積んできたベテランならではの意見である。
看護の「看」には「本質を見極める」という意味があるが、目先の便利さにとらわれずに看護の本質を突いた意見ではないだろうか。